養成所

mabikitei2013-03-01

自分が出た舞台の台本は思い出と共に保存してあった。
が、思い切って半分処分してしまった。
台本だけで場所を取ってしまったからだ。
それでも特別な思いの舞台の台本だけは残してある。
台本ではないが、養成所の時にもらった予定表も残してある。
色あせた予定表は26年前養成所に通っていたときの物だ。
残念ながら4月〜6月までしかない。
7月以降は無くしてしまったのか?
それとも配られていないのか分からない。
しかしビッチリと受業が組まれていたこと。
N市では初めての本格的な養成所だ。
月〜土曜日まで毎日訓練訓練だった。
夏までは主に肉体訓練が中心の受業。
発声、滑舌、演技、諸々を繰り返し行う。
印象的なのはマイムの受業だ。
腕立て伏せ10回。
腹筋10回。
背筋10回。
これを1セットで10回やらされる。
マルセルマルソーのお弟子さんが先生だった。
残念ながらガンで亡くなられてしまった。
朗読の時間では、何やら全員でしゃがみ込んで龍になり、
龍の詩を絶叫させられた。
肉体訓練ではひたすらにジャンプを続けさせられた。
そんな受業に滅茶苦茶に退屈でつまらなかった記憶だけが残る。どの世界でも「基礎訓練」はつまらないものだ。
今は違う。
今は基礎訓練をさせる側になった。
で思い出したが、先日「教えるのが好きなの?」と聞かれた。
僕が先生と呼ばれている事が不思議らしい。
何も好きで教えている訳ではない。
教える仕事があるから教えるのである。
それでも一応恐縮しながらやってはいる。
尤も天狗になる要素は自分にはない。
無いことは分かっている。
話は養成所に戻る。
では「いつ」演劇に頬を殴られたか?
僕が養成所に入った年、母体になる劇団の旗揚げ公演が行われた。僕はスタッフとして手伝いをしたのだ。
本番の舞台。
僕は舞台装置のベニヤで出来ているパネルに裏側にいた。
旗揚げ公演の客席は超満員!
通路にまでお客さんが座っている状態だ(今では消防法の関係で無理)
主役が舞台に飛び出していくと割れんばかりの拍手が起こる。「スゲー」なんて思っていたら更に凄いことが。
芝居がうけてお客さんがドッと笑い出す。
その瞬間にベニヤで出来た舞台装置がビリビリと震えだした。お客さんの笑い声が空気を伝わりベニヤが響いたのだ。これを目の当たりに見たときは興奮した。
「これが芝居か!」と。
単純かもしれない。
でもこんなに力を持ったものを感じたことはなかった。
それ以来、自分も震わせるほど笑わせてみたいと思った。
あの時の体験が無ければ、とっくに違う道を進んだだろう。