若いから?

籍を置かせてもらってるタレント事務所から仕事の依頼が来ました。映画のエキストラの役です。
N市はなかなか仕事が回ってこないので、おっさんには辛い土地ですね。
エキストラの役はホンの数合わせ程度の出番で、きっとどこに映っているかわからないと思います。
が、初めて映画の現場に接してきました。
一つのシーンに何回もテストを重ね納得がいくまで本番を繰り返します。
そのつど、監督から指示が飛び、僕も小さいながら演技を変えてみたりとそれなりに工夫をしてみました。
 午前中の出番は2シーンのみ。
 お弁当を戴き、午後は1シーンの撮影。
 その1シーンは本来は2シーンのカット割りだったのを、緊張感を出すためでしょうか?カメラを回しっぱなしで2〜3分のシーンとしての撮影になりました。


 少女がピアノを弾くためにステージに現れます。
 僕は観客の役で1列目に座りました。
辿々しく登場した少女はピアノに座りピアノを弾きます。
 勿論、、、弾く真似(演技)ですが、本番の緊張感が少女役の女優の顔を強ばらせます。それがリアルに表現され役の緊張感が伝わりました。
と、ここまでヨイショをしました。

 さてロケの現場は某芸術大学のホールでした。
 当然、そこに通う生徒さんも数人、エキストラとして客席におりました。
 数回のリハーサルを終えて本番です。
 が、やはり、、、納得がいかなかったのか、監督さんから「もう1回」と声がかかりました。
 良いモノを撮りたい!
 ほんの数ミリの表現のこだわりなんでしょう。
 映画作りの熱気が伝わります。
 監督やスタッフさんが何度か映像をチェックしていました。それも客席で行われたのです。
 僕らエキストラもその映像チェックを見ることが出来ました。驚いたのはその映像チェックの後、男子学生から主演のヒロインに対してダメが出たのです。
 それはペダルを踏んでいない。と、いうダメでした。
 
 ピアノはまず足元のペダルを踏み込むことにより、ピアノの鍵盤の中のハンマーが盛り上がり、弦を叩き、音が出るらしいです。


 映像の中にそのハンマー部分が映り込んで動いていないのを見逃さなかったのです。ハンマーが動いていないのに音が出るのは不自然。確かにその通りなのでしょう。

 指摘は助監督に、そして監督に報告されました。
 その指摘に納得をした監督は直ちに主演女優にペダルを踏む稽古をさせました。
 

 指摘をした学生の顔はどこかしか「当然の事を指摘しただけ」というニタニタした笑みが見えました。
 オッさんであります僕は内心「そんなのはどうでもええだろう!ペダルが主役か?」とも思いました(苦笑)

 その後、数回繰り返された本番。
 その度に主演の女優はペダルを踏み忘れたり、踏んだりと繰り返して漸く納得のいく映像が取れたみたいで「OK」の声がかかりました。

 なんと2時間を費やしていました。


 こだわるからこそ、内容の深いものが作れる。
 舞台も一緒です。


 エキストラという与えられた仕事の内容に不満はありません。

 ただ指摘した学生の「若さ」に苦笑した自分に、
疲れた1日でした。