激しい

我が愛車「ナビ男」はいつもマンションの前に
ある駐車場に止めてある。
屋根はなく中二階とでも言うか、少し高い部分にあるため
目の前の坂になった道路を見おろすような構造になっている。



夕方頃だった。
車内の整理をしていたら子どもの泣き叫ぶ声がしてきた。
それも尋常ではないほど「イヤだぁ!」との叫びだ。
声は隣に隣接するスポーツ店の地下駐車場の出入口から
聞こえる。そしてそこには白い車が停まっていた。
声はやがてお母さんらしい女性の声も聞こえてきた。
「○△□※って言ったでしょう!」と何を言っているのか
半分わからない。
いずれにせよお母さんも相当に怒っているようすだ。
しばらく「イヤだ」「言ったでしょう」の押し問答が
激しく続いた。
何に対して「イヤだ」と泣き叫んでいるのかわからない。
でもその時は「買ってくれなきゃあイヤだ!」と思った。
だからその会話を察するに、聞き分けの聞かない子どもに
怒り心頭のお母さんという関係を想像した。
やがてバタン!という音がした。
その間も子どもは凄い勢いで泣き叫んでいる。
それはもう近所迷惑なくらいだった。
やがて白い車が動き出して走り出したら、車の影から
子どもが転がり出してきたから、、、目が点になった。
泣き叫んでいたのはどうやら年長の女の子だ。
その子が坂の道路をコロコロと転がり落ちていった。
一瞬、車から放り出されたのだと思った。
それぐらい激しかったのだ。
その光景が僕の目の前で繰り広げられた。



車は4~5メートル走って停まった。
子どもは言葉にならない叫び声をあげる。
そして車からお母さんが降りてきた。
その瞬間、お母さんと目があった。
目がつり上がり完全に子どもにブチ切れている表情だ。
それでも子どもは「痛かった〜!」と泣いて
お母さんに近寄る。
そして車に乗せられて、、、車は走っていった。




「我が侭を言う子は置いていきます!」と言ったのだろうか。置いてかれるのはイヤだから、車にしがみついたのだろう。それでもお母さんは車を発車させた。その弾みで子どもは道路を転げ落ちてきた。




そんな事だろうか?
あの女の子は、きっとケガはしたはずだ、もの凄い転がり方だったからね。
でも大事にならずに済んで良かった。
もし打ち処が悪ければ、、、。
もし後ろから車がきていれば、、、。



割と酷い仕打ちを受けた女の子が可哀想に思えた。
理不尽に思うのは、そんな事をされても親は親だ。
甘えるのは親しかいないということ。
女の子にはあのお母さんしかいない弱い立場なんだ。
コンクリートの道路の坂道を転げ落ちてきたことを
どう思っているのか?
不思議でならない現場を見てしまった夕方だった。