こんな体験をしました!

学校の先生をしておられる先輩俳優から「高校で舞台監督の仕事を教えてくれ」
との依頼がありました。そこで舞台監督の講義を先日やってきました。
聞けば愛知県内の高校の演劇合同祭みたいな事の中で
2時間、舞台監督の仕事の講義をしてほしいとのこと。
しかし「申し訳ありませんが、プロの舞監ではないので出来ません」
とお断りしたのです。
が、「なんで?やったことあるじゃん!」
「そりゃあ〜ありますけど」
「じゃあ教えてやってよ」で押しきられました。
それから小生は「エラいこっちゃ!」となり、
他人に教えるほどの自信と経験がありません!となり、
そこであらためて「舞台監督とは」を勉強し直し、
自分がやってきた事を思い出し、
2時間の講義の組み立てをおこないました。
因みにこの大会は演劇部の生徒さん主導で行われる大会みたいです。
 さあ当日です。こさえた資料を手に学校に向かいますれば、
入口にて元気よく生徒さんたちから「おはようございます」と
こちらが圧倒される勢いで声をかけられました。
「え〜と?(誰?)」みたいな感じで言われ、
「あっ、今日、舞台監督講座をするマルマルです」と言うと
「え〜っ?担当は誰?」
「あっ、、、いまここにはいませんよ」の生徒さんたちの問答があり、
「じゃあ僕が案内します!」と男子生徒に連れられて校舎の中にある
実行委員会控え室の入口に案内されました。
男子生徒は小生を廊下に待たせて
「ねえ〜舞台監督講座の担当は誰?いま外で待ってるよ!」
と大きな声で叫びました。
俺はお前の友達じゃねえぞ!と思わず突っ込みたくなりました。
そして暫くして担当の女子高校生が出てきました。
事前に何度もメールのやり取りをした女の子と初対面です。
同じメール内容を何度も送りつけられ、
こちらからの質問のメールには一切返事をくれなかった子です。
小生は「この子か!」と思いましたが聞けば高校1年生でした。
さて「こちらです」と更に案内された控え室に入ってビックリ。
そうそうたる顔ぶれが並んでおりました。
講座はそれぞれの分野で別れており、表現(役者)・演出・脚本・
照明・音響・大道具・舞台監督・ダンスなどなど。
それぞれでの講義が組まれていたのです。
そしてパンフを渡されようやく今回の事業がなんなのかがわかりました。
そこにいたほぼ全員が「君が舞台監督を教えるの!」と仰天していました(笑)
ところで小生担当の高校一年生の女子生徒は自分が何をしていいのかわからず
右往左往している状態が一目でわかりました。
教室に案内される途中に「はい」と渡されたのがアンケート用紙でした。
「これはなに?」と聞くと「生徒に配ってください」とのこと。
なんだろうと思いアンケート用紙に目を通せば
〜この講義を受けてよかった・よくなかった〜
〜先生の講義内容は理解できた・出来なかった〜
などなどの項目があり「これを俺が配るの?」と聞くと「はい」と
答えたので「これは俺が配るのではなくて君が配りなさい」と突っ返してやりました。
教えてやってと言われて来たのに、なんの評価をされなければいけないのか?
、、、よく分かりませんでした(笑)
しかも教室に入れば生徒さん達がシラ〜っと静に待っています。
「なんだこの講義を受けてやるという重い雰囲気は!しかも目が死んでる!」と思いました。
重い、、、重いよ〜この空気!
しかも担当の女子生徒は何言わず机に座ったままです(笑)
「これって、、、時間になったら始めていいの?」
「・・・・?」
「ところで受講生は全員来ているの?」
女子生徒は一差し指を立てながら数え出します。そして「18人です!」
「?、、、あっ、、、そうですか、、、で、二人いないけど始めていいのかな?」
「、、、さあ。」
この担当の高校一年生の女子生徒は小生の講義中、しきりに大あくびを連発していました。
それも一列目の端っこの席で(笑)
さて講義ですが、この重たい空気は何だろう?と思い逆に
「なぜ舞台監督の講義を受けたいのか?」それを生徒さん達にぶつけました。
ただ単に〜どれだけ舞台監督に興味があるのか?〜を聞きたかったのです。
受講生の生徒は半数以上が高校一年生でした、ついこの間まで中学生だった子ども達です。
ようやく一人の男子生徒が答えてくれました。が、やっぱり子どもです。馬鹿正直でした(笑)
「第1希望、第2希望、第3希望があって、第1希望がダメで、第2希望も満員で、
第3希望だったんです」
〜何だと?〜
別の生徒さんは「顧問の先生に「お前、次は舞台監督をやるから受けろ」って言われました。
〜何!〜

この瞬間、小生のモチベーションは限りなくゼロになりました。
手強いぞこの子ども達は!
でも負けません!小生と子ども達の闘いが始まりました!
淡々と「稽古初めから本番終了までの舞台監督の仕事の内容と流れ」を説明し始めました。
つまらなそうな顔をしている子どもがいれば「あの子はそういう顔だから仕方がない」と思い。
こっくりと船をこぐ子がいれば「昨日、夜遅くまで勉強していたんだろう。眠いよな」と思い。
しかし中には必死にメモをとる子どももいるのです。
その子には「お前、いいやつだなあ〜」女子生徒でしたので「絶対いい女になるよ」とさえ思い。
二時間の講義は終わりました。
この闘いに勝ったか負けたか?(勝ち負けではないだろうが(笑))
講義が終わった後、一人の女子生徒が台本を持ってやってきました。
「先生、質問があるのですが?」
「はい、、、なんですか?」
「あの〜舞台監督ってまず、、、最初に何をしたらいいですか?」
と、その女子生徒が担当する上演台本を開いて僕に見せて聞いてきたのです。
一瞬〜この二時間はなんだったんだろう?〜と思いました。
「話を聞いてた?」
「はい!とっても参考になりました!」
「じゃあ〜台本に最初に何をしなければいけないのかを考えて書き込みなさい。
そしてみんなで相談しながら仕事を乗り越えて芝居をつくりなさい。」
「はい!そうします!ありがとうございました!」
(舞台監督は扇の要であると某偉い先生は言っておりました)
焦燥感だけが残ります。
小生がみんなに見せた資料等を片付け始めている間に、生徒さんは誰もいなくなりました。
担当の女子生徒さえもいなくなりました。
ポツンと教室に残された小生は思います。「学校の先生って孤独な職業なのかなあ〜」って。
廊下では生徒さん達の笑い声が学びの校舎に響きました。
無邪気に騒ぐ生徒さん達の間をぬって控え室に戻りました。
こんな体験をしました。
そうです、こんな体験をしたんです。
小生の子どもの時も無邪気だったはずです。
でも大人に対してどう接したらいいのか分からなかったかも。
そんな時代があったことを思い出しながら家路につきました。