いつかどこかで。
偶然、地下鉄の中で甥っ子のチイと会った。
彼は学校の帰り、僕はレッスン講師の帰り。
栄から飛び乗った地下鉄の中。
ふと見るとどこかで見た顔が飛び込んできた。
「まさか?」
甥っ子のチッさまだった。
彼も小生の顔を見て「なんでいるの?」と驚いていた。
「これから帰るのか?」と小生が聞く。
電車通学の甥っ子が向かうのは千種駅。
しかし、チッさまの表情は微妙に揺れていた。
何故か?
見れば友達と一緒だったのだ。
小さな思春期に入ったのだろうか?
照れと困惑の表情が見て取れた。
〜どうりで余所余所しいはずだ〜
チッさまの友達がチッさまに聞く
「だれ?」
小声で小生が誰かを伝えたみたいだ。
友達はフンフンと頷いてみせた。
それからの5分のチッさまは不思議な感覚を覚えたであろう。
「早く千種に着いてくれないか!」という雰囲気がありありと
彼の小さな体から出ていた。
僕はその空気を感じてソバに行かないようにした。
このことを帰って妻に話したら
「叔父としてはちょっと寂しいね」と言われた。
それにしても小生から見れば不思議な光景だ。
正月とか盆とかにしか会わないから普段の姿を知らない。
生まれた時から知っている甥っ子だ。
大きくなり小学3年生にもなると友達もいる。
その友達としゃべる姿を見ていると
自分が知らない甥っ子の姿を見て
「成長していくんだ」と変に感じる。
ようやくチッさまの降りる駅に着いた。
小生が「じゃあな」と手を上げると
チッさまも「じゃあ」と手を上げ、そそくさと車両を降りた。
その隙にチッさまの友達が「どうも」とペコリと小生に
頭を下げてきた。
この男の子に感心し小生も頭を下げた。
もう一度「じゃあな」と言うとチッさまは人混みに消えた。
そして地下鉄は次の駅へと動き出す。
また新しいドラマを作るために。