ベンチ2

今から18年も前になりますが、二十歳の頃の僕はまだ劇団の研究生でした。
劇団のスタジオも今で言う「久屋大通り」駅のすぐ側にあったんです。
そのスタジオで割と盛んに小発表会みたいな事が行われておりました。
研究生の僕は当然・・・強制参加です〜笑〜。
さてその時にやった寸劇が、確か「温床」という作品だったと思います。
これまた古い作品で、内容は職業婦人(“職業婦人”という言葉が古いでしょう)に
目覚めた女性が、交際相手の男性に専業主婦を求めているのなら、自分の事を考え直して
ほしいと、あ〜でもない、こ〜でもないと語る作品なんです。
その時は何もかもよくわからずに演じていました〜すいません〜。
そしてこの作品には置き道具で“ベンチ”が出てくるんです。
今でこそベンチとなればすぐに用意する手段がわかりますが、右も左もわからない当時は
「ベンチなんてどうすればいいの?」という状態でした〜笑〜。
作品の設定も(うろ覚えですが)確か海辺の丘でさびれたベンチが一つ置いてあるだけ。
劇団のスタジオにある長イスでは雰囲気が出ないと言われ、僕と相手役の女の子は途方に暮れます。


 いま栄の町はあの頃に比べるとガラリという言葉が合うくらい変わりました。
オアシスがあるところはその昔、NHKと愛知県文化講堂(美術館と図書館が併合)と
言う建物があったんです。その愛知県文化講堂は大通りに面して建っておりました。
そして美術品を運び入れる搬入口の入り口が大通り(広小路)にあったんです。
実は、そのすぐ側にひっそり(?)とバス停がありました。


僕と相手役の女の子は、たまたま通りかかった(?)そのバス停に釘付けになります。
そこにはボロボロの朽ちかけた木のベンチがあったからです。
とても感じのいい、まさにピッタリのベンチでした。
見れば鎖で繋いであるわけでもなく、ポツンと置かれてあるだけ!
そこで僕達はどうしたか?なんとそのベンチを白昼堂々と持ち上げて持って帰って来ました。
いえ・・・拝借いたしました。
男と女が朽ちたベンチを仲良く持って栄を堂々と歩いていたんですが、
幸い誰にも咎められる事なくスタジオまで着いてしまったんです。
当然、そのベンチは本番で大活躍!
僕達は無事に発表会を終える事が出来ました。


 これも“ベンチ”で突然思い出した古い記憶です〜笑〜。


ちなみに・・・その朽ちたベンチはいつの間にかスタジオから無くなっていました。
誰かが元の場所に戻してくれた?いえいえ廃棄処分になったと思います。
座るとボキッといきそうなくらいのボロボロのベンチでした・・・から。