お祝いの酒

二つ目昇進の落語家さんのお祝いにお酒を買って持って行くことにした。

そこで某B酒店に飛び込んだ。
丁度お店は改装中だったのだが、その横に小さなスペースを設け、
チェーン店なのにほそぼそと伏見店は営業していた。
小さな入口には「仮店舗」のような貼り紙がしてある。
時間もなく、周りに酒屋が見つけられない僕は、飛び込んでみることにした。
入口には店員であろう背の高いヒョロッとした若いお兄ちゃんがタバコを吸っていた。
僕が横を通り過ぎ店の中に入って行ったので慌てて店の中に入ってきた。
店の中はこじんまりとしていて、品数も少なかった。
ふと見るとレジには、小太りの若い店員が立っている。
どうやら僕が飛び込んだ時間はこの二人が店番をしているみたいだ。
お目当ての酒を見つけ、レジに持って行き、
小太りの店員に「熨斗を付けたいのだが」と言うと、
彼はあらゆる抽斗という抽斗を開け熨斗を探し始めた。
背の高い店員が手伝おうとすると「発泡スチロールを探して」と言いつける。
どうやら瓶を包む薄いスチロールで出来た包みを指して言っているようだ。
背の高い店員は店の奥にある棚を引っ掻き回しだした。
ようやく熨斗を見つけた小太りの店員は、背の高い店員を後目に、
店内を歩き始めた。
〜何をしているんだろう?〜と思った瞬間、
小太りの店員は陳列してあるお酒を手に取り、包んであったスチロールをはぎ取り
、僕が買う一升瓶に付け替えたのである!
とても客の前で行う行為ではない。
これを本社に告げれば即刻クビだろう。
いやこの程度の企業なのだろうか?ビ○ク酒は?
僕は小太りの店員に「熨斗に名前を書いてほしい」と頼んだ。
見ればレジにはパソコンもありプリンターもある。
それで打ち出してくれるのかと思いきや
「僕〜字が下手なので」と言ってきた。
そして背の高い店員はやおら筆ペンを客である僕の前に差し出したのだ。
仕方がないから自分で御祝いと名前を書き込んだ。
なかなかのコンビ店員が揃ったお店だった。