ゴールドマン

自動車保険の内容変更をしなければいけなくなった。
ただ単に振り落としをする銀行を変更するだけの事だけど書類を書き変えなければいけない。
そこで保険屋さんは「ご自宅にお伺いします」と言ってきた。いや〜これはとんでもない話である。
なぜなら?
なぜなら部屋の掃除をしなければとてもお客さんを上げる事が出来ないからである!
ここ数週間は僕も妻もクタクタで、家にはただ寝に帰るだけの状態である。
で、僕が保険屋の事務所に行くことにした。幸い千種文化小劇場の隣に保険の事務所があったので助かった。
さて、古ぼけた建物(失礼!)の二階に上がって行くと保険屋さんの事務所があった。
中に入ると割と小さな事務所である。綺麗に整理された戸棚や整然と並べられたデスクの
上にパソコンが並び、事務所内は清潔感が漂っていた。
ところがその狭い事務所にはデップリと貫禄のある男性が二人と、非常におとなしそうな
小柄の若いお姉さんの三人しかいない。
そして僕の対応をしてくれたのは、その小柄のおとなしそうなお姉さん。
僕が名前をなのったら直ぐにわかったらしく、書類を持って来た。
「こちらの書類をお書きください」ボソボソと小さな声でしゃべられた。本当におとなしい女性みたいだ。
「もう少し腹から声を出しなさい!」とダメを出したいぐらいの生命力のない音だった。
目の前の書類を書き込んでいるとお姉さんはアイスコーヒー(名古屋だと冷コーと言うらしい)を出してくれた。
(まあー無理して明るく努める事はないけど、こんな狭い空間でオッさん達に囲まれて仕事をしていると暗くもなるわなあ)
などと初めて会ったお姉さんの事を考えてみる。
(僕の妻は自分を奮闘させるためか、テンションをあげるためか、たまに「ウオー!」と叫んでいるが(これはただストレスが溜まって
いるだけのことのかしら?・・・)・・・君はそんな事をする?)
・・・どうもこのお姉さんの事が気になる。
まるで「私は人生の楽しみを感じたり味わったりした事がない」・・・みたいな顔つきである。
一通りの説明をお姉さんから受けたのだが、、、また小さな声で「あっ、免許証はブルーですよね?」と聞いてきた。
最初は何の事だか解らなかったが免許証を見せたら、、、また小さな声で「あっ、ゴールドーだ」と本当に小さく叫んだ。
僕は「ゴールドだと何かあるんですか?」
「ええ、お安くなるんです。今、計算をし直します」と小さな声で言うとお姉さんは奥のパソコンが置いてあるデスクに向かって行った。
そして、、、椅子に座ったとたんデスクトップのパソコンに隠れて見えなくなった。
(でもあんなおとなしい子が、裏では不倫とかしてたりして? 誰と?課長と?)
ニコッと微笑みながら戻ってきたお姉さんから改めて説明を聞き直して終了。
ものの10分と事務所にはいなかった僕。
「わざわざありがとうございました」とお姉さんはニコッと微笑んだ。
「いえこちらこそ宜しくお願いします」と挨拶をして出てきた僕。
事務所の芝居でも書くかと思いながらイメージしてみたが、昼ドラにもなりそうもないくらい、くだらない人間関係しか浮かばない。
乏しい想像力でした(苦笑)。