屈強

某Hホテルの鍋洗い。
経費削減で人件費が削られている。
もろに影響を受けている私である。
入りたい日、時間を提示するのだが、
なかなか入れてもらえない。
これもホテル自体の売り上げが減少しているからだ。
人件費を削減するとどうなるか。
洗い場に人が入らないことになる。
以前は二人体制だった場所が一人になるということだ。
パーティーや結婚式があるとき。
ホテルは大賑わいになる。
当然、厨房もフル回転だ!
そんな時は特別大きな厨房で料理をダイナミックに作る。
何百人と言う料理が一気に作られる。
問題はその後に出てくる洗い物だ。
ハンパな量じゃない。
先日、自分の洗い場がヒマだったので。
その「ハンパな量」じゃない洗い場を覗きに行った。
もの凄い鍋が摘み置かれ。
寸胴も山積み。
ボールも山積み。
何より驚いたのは鉄板の枚数だ。
魚を焼いたり、オーブンで肉を焼いたりするらしいのだ。
液晶テレビの割とサイズの大きさと表現すれば良いか。
そんなものが50枚近く山積みにされていた。
やっかいなのは、、、焦げついていて簡単に奇麗にならないこと。
暫くはお湯につけて必死になってゴシゴシと擦らないと
汚れは落ちない。
そんな洗い場をたった4時間で片づけなければならない。
なにせ洗うそばからドンドン次の洗い物が運ばれる。
だから片づくはずがない。
そして料理人たちは作るだけ作ったら、サッサと帰ってしまう。

厨房の片隅には必死に洗い続ける屈強な男一人。
先日見るに見かねて手伝ってみた。
直径30〜40センチある頑丈な片手鍋を次々に洗う。
どれもこれもがとても重い。
積み上げられた鍋を持ち上げシンクの中でゴシゴシと洗う。
少しでも洗い残しがあると苦情がくる。
腰を落とし、腹に力を入れて洗い落とす。
隣のおじさんは「ありがとう済まないね」と言ってくる。
「いやいやいつもお世話になっているしお互い様です」
と返す。
「腰に気をつけてね。腰を痛めるよ」
「はいわかりました」
何て言っていたら、、、腰を痛めた。



おじさんは見た目も頑丈だ。
小柄だけど筋肉がついていて大きく見える。
鍋洗いのバイトにはそんな屈強な男たちがわんさかいる。
今日もそんな男たちが目に見えぬ早さで腕を動かし、
鍋や鉄板を洗っているのだ・・・。